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物忘れ、認知症について、(レカネマブについて補足)

認知症といった言葉はよく知られていますが、その診療については一般にはあまり知られていないのが現状です。

認知症という病気はありません。

認知症とは物忘れによって社会生活に困難が生じている状態を示す症状名なのです。当然ですが、認知症を来す病気はたくさんあり、病気によって治療が異なってきます。ですので正しく診断することは当たり前ですが大変重要になります。

認知症を来す疾患の中で多くを占めるアルツハイマー病などの神経変性疾患については、現時点では根治療法はありませんが、万が一でも根治療法や進行を遅らせることのできるまれな病気を見逃してはいけません。これを除外診断といい、脳神経内科領域では重要視される考え方です。具体的には詳細な病歴聴取、高次機能の診察を行ったうえで、MRI等の画像検査のみならず、特殊な感染症やビタミン欠乏症精査のための血液検査、非けいれん性てんかん重積を精査するための脳波検査を行う必要があります。

アルツハイマー病等の根治療法のない神経変性疾患による認知症については対症的治療を行うことになりますが、抗認知症薬の副作用が出ているのに継続処方されている場合、必要のない鎮静剤が処方され運動障害を生じている場合、全く効果のない薬が処方されている場合が散見されます。治療には患者様本人だけではなくご家族や施設の協力、理解が必要で、いずれかが欠けただけでも先述の不適切と思われる治療が行われる温床となってしまいます。当院では患者様本人、ご家族、施設に対して根気強く病気をご理解いただく努力をつづけ、患者様本人にとって最も適切な医療を行っていきます。

アルツハイマー病に対し進行を少し遅らせることのできる新しい薬(レカネマブ)が認可されました。軽度認知障害または初期のアルツハイマー型認知症の方が対象となります。投与に先立ってアミロイドPET検査または髄液検査でアミロイドタンパクが脳内にあることを確認する必要があり、大阪市内では現在少数の基幹病院でのみこのお薬の導入を行っています。このお薬は2週間に一回点滴で投与します。治験では2年間観察し進行を25%程度進行を遅らせることができました。一方で副作用としては1割を超える方に脳浮腫を生じることが報告され、まれに出血を伴うことがありました。また投与された方が脳梗塞を発症した場合に出血リスクのため血栓を溶かす薬の投与が困難となります。この薬剤を投与すべきかどうかについては患者様の年齢や環境を熟慮したうえで判断する必要があります。

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